<ハルイロ>
これは事実あたしが体験した話なの。
でも、あたしたちの世界じゃこれを信じてくれる人なんかいなくてさあ…。
結局、あなた方…あたしから見たら異世界の人たちにこれを聞いて欲しいわけよ。 信じる信じないは別にして。
でも、別の世界のことなんだから、否定する術は持たないでしょ?
あたしの世界ってのは、あなた達の世界とよく似てるの。確かに言葉は違うけど。…それは自動翻訳機に任せるわ。聞いた話だと、あたしの住んでる地域は「ニホン」って国とそっくりなんだって。ビルとかいっぱい建ってて、みんな働き詰なの。
お金がなきゃ生きていけないんだもの。だから、どんなきつい仕事だってする。あたしだって、学校に行く前とか仕事させられてんのよ。
誰もが「忙しい、忙しい」と口にしてばっかりで、休みは本当に肉体を休めることに使う。あたしたち学生とかだけじゃないかな? 遊んだり、趣味を持ったりすることができるのって。まあ、人によって違うけどね。
でも、大人が忙しそうに動いてるんだもの。あたしたちだって、ストレスはたまるわけよ。解消しようと思ったって、解消できそうにないし。
だから、いつのまにかあたしの世界の人々は花を見たりすることがなくなってたの。
花を買いに行くことも面倒くさくなってさ。お金でいいでしょ? ってな感じ。
お花屋さんもなくなったし。…いや、まだやってるところあるのかなあ…?
で、あたしたちの国にも春がきて、雪が解けてだんだん暖かくなってって。
寒いのは嫌いな性格だから、あたしは春になるのを毎年楽しみにしてるんだけどね。
今年の春はなんとなく春って感じがしなかったの。理由はわかんないけど。だけど、友達に聞いても「そう?」って首を傾げられるだけでサ。あたしはこう思えてしまう理由を一人で考えてた。
あたしの家には一応庭があるの。勿論、洗濯物を干すためにしか使われてない場所だけど。あたしはその場所が結構好きで、天気のいい日はそこにある椅子に座って、日の光を浴びながら、母さんの内職を手伝ったりしてた。ちょうどその日も天気がよくて、ちゃんと内職をしながらそこで日光浴してた。そうしながらも、頭の中ではどうして春って感じがしないのかについて考えてたけどね。
「………うーん…。何で?」
あたしはどうでも良くなりつつある疑問の前に溜息をつく。
そして、ぐーっと空を仰ぐ。薄く雲が広がっているような薄い水色の空があたしの目に飛び込んできた。
体を起こしてふうっと一息着くと、あたしの目の前に一人の少年がいることに気がついたの。
見たことない少年だった。昔、本で見た女の人が着てるっていう、白い「キモノ」みたいな服を着て、下はでかぶかなズボンみたいな服を着ていた。(なんていうの? あれ)
少年の髪は亜麻色に近く、少し癖のついたショートカット。一応、誰も逆らえなさそうな雰囲気ときっとあたしを見る瞳は少年だけど、背は低くて、童顔なのを見るとやはりオトコノコに近いような気がした。
「花が咲かないからだよ」
「へ?」
少年は突然そんなことを口にする。
「『春って感じがしない』って悩んでたでしょ? 本当は教えてあげるつもりなかったけど、そのことに気付いたおまけとして教えてあげたよ。僕に感謝してね」
生意気。だけど、雰囲気が逆らってはいけないことを物語っていた。特別な威圧感がある気がした。
「ああ、本当だ……。…どうして?」
あたしは素直に彼の言葉を信じ、間抜けな声を出した。
少年はあたしを馬鹿にしたような目で見、そしてゆっくりと口を開く。
「花はどうして咲くと思う? 子孫を残す術なら他にもあるというのに」
「どうして…? 花が咲くのに理由が要るわけ?」
「…人が愛してくれたからだよ。美しく綺麗に咲く花をね。だから、花は今までずっと好かれようとしてきたんだ」
少年はあたしを睨みつけ、右手をあたしに向けた。その動作がとても綺麗で、あたしは言葉を発することができなかった。
「だけど、君たち人間はもう、花を見ようとしない。毎年、頑張って咲く花をもう見ようとしないんだ。だったら、わざわざ花を咲かす必要はないだろう?」
少年は座ったままのあたしに背を向ける。風が吹いて、彼の服がしなびやかに揺れた。
「…しかも、そのことにすら気付く人はいないんだ。君は異変を気付いただけだったし」
少年はとても悲しそうだった。その後姿にあたしも哀しみを覚える。
花の咲かない草があたしの足元で悲しそうに揺れている。あたしはそっとその葉に触れた。
「でもさ」
あたしは静寂を突き破るような大声を出した。少年はあたしの声に驚き振り向く。
「今はまだ春が始まったばかりだから、今のあたしたちにはそんなこと考えてる暇がないだけよ。きっと。やっぱり花はあたしたちに季節の移り目を知らせてくれるものだもん。
それにね、植物は変わっちゃいけないものだと思うよ。質素に毎年同じ花を咲かせてくれるから、あたしたちは安心するんだ。変わるものが多い世の中で変わらないものがあることを教えてくれてるんだよ。だから、あたしは変わらずに同じ花を咲かせていて欲しいと思う。変わらないことって本当はとても素敵なことだから」
あたしは彼ににっと笑いかけた。自分でもくさい台詞だなあと思い、とりあえず笑ってみるしかなかった。何故か少年はかあっと頬を赤らめる。
「…よ」
「? 何?」
「信じてあげるよ。君の言ったこと。人の役に、たってるんだよね?」
あたしは「うん」と頷いて見せた。
少年はあたしに背を向けてぱちんと指を鳴らす。
ゆっくりと、足元の草花や周りの木々の花が開きだす。
「わあ……」
あたしはその美しさに目を見張る。歓喜の声が漏れた。
「すごいすごい!!これって手品?!」
あたしは目の前にいた少年に話し掛けた。いや、いたはずの少年だ。
「あれ……?」
少年の姿はあたしの目の前から跡形もなく消えていた。
残った風が美しい木々を揺らし、其れだけがあたしと少年をつないでいるような気がした。
「…結局誰だったんだろう……?」
あたしは椅子に座りなおし、髪の毛をかき上げる。夢であったとは思えない。この満開の花々がその証だった。
「綺麗………」
彼のことがわからなくても、この出来事が分からなくても、とりあえず、事実花が咲き乱れる場所であたしはゆっくりと目をつぶって風を感じていた。
何? 「嘘でしょ」って?
本当なんだってばあ!あなたなら信じてくれると思って書いたんだからね!!
…読みにくいのは勘弁してね。あたし、文章書くの苦手なのよ。すんごく短くなっちゃったしな。
途中からお話風になっちゃってる辺りもおまけして頂戴!書くの難しかったのよ。
最後に、あなたの世界にも花はあるよね?
その大切さをあなたたちは忘れないでね。
それでは。読んでくれてありがとう。
またあえる日までって………そんな日あるのかねえ……?
<END>
あとがき
絵本風? 初のファンタジー? です。
誰かに捧げてしまいました……。恥ずかしい……。
最初にあげようと思っていたのと180度違う作品になりました。
昨日まで書いていた其れはグロすぎて中止にしたのです…。おかげさまで遅くなりました。
読んでいただいてありがとうございました。
あなたの貴重な時間を奪ってしまったことをお許しください。(汗)
四月四日 矢羽霧霞(やばねきりか)
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